僕が20数年前まだ青い春を謳歌していた頃、とある衣料品メーカーの配送センター
で肉体労働のアルバイトをしていました。
働いている人のほとんどがおばちゃんか大学生で、真夏は40℃近くなる倉庫で
来る日も来る日も衣料品を伝票の数の分だけ段ボールにつめてトラックに詰め込む
作業。
そこに「川村っちょ」と呼ばれてるおじいさんがいて、たしか75歳くらいだったと思う。
川村っちょは、若い頃ずいぶん悪い事を繰り返して生きてきたようで
眼光の異様な鋭さと体中に施された色とりどりの入れ墨が川村っちょの素行の悪さを
物語っていました。
それでも普段はものすごく面白いおじいさんで、お昼休みになると僕ら学生を集めて
女性の押し倒し方などを実演を交えながらレクチャーする姿がありました。
事件があったのは真夏の空気のどんより重く蒸し暑い、とある日。
倉庫の奥のトイレからものすごい大音量のラジオの声(たしかあまちんとかいう
名古屋のタレントの番組だったような)
僕たちがかけつけるとトイレは一面シンナーの臭い。そこに爆音のラジオを耳に
あてながら、よだれをダラダラたらしてしゃがみこんでいる川村っちょの姿が。
パートのおばちゃんの一人が「また川村さんトイレでシンナー吸って!!」
社員のおじさんたちに川村ッチョが事務室に首根っこつかまれて連れて行かれる
後ろ姿を呆然と僕らバイトが見送るという、なんとも間抜けなドナドナがそこに
ありました。
後日、僕が川村ッチョに「こないだ大変だったねぇ〜〜」って声をかけると
なんとも恥ずかしそうに「おめえたちは俺みたいになったらあかんぞ!」
うわ〜〜反面教師的な人生の格言つーか戒めみたいな事このじーさん言っとる。
さむっ!誰がなるかーい!って思わず心のツッコミを入れてしまったものでした。
あれから20年、ことあるごとにスタッフの女の子達に
「僕みたいになったいかんよ!」って言いそうになるのを
のど元でぐっとこらえる今日この頃なのでありました。
PS、さらに後日談であの時の状況を川村ッチョに詳しく聞いたら
ラジオからカエルがいっぱい出てきて、それを一生懸命ラジオの中に
戻そうとしていたそうです。おおらかなる昭和の時代を生き抜いた一人のじいさんの
話でした(笑)