汝、自らの指と指を擦り合わせば即ち袋は開かれる。

スーパーで買い物をしたあとレジ袋が開けなくて困る。

手のひらに油分がないからだ。

とはいえ、あの雑巾の湿らしたやつを触るのもこのご時世躊躇してしまう。

まあなんとか摩擦を使ってビニールをずらすのだがこの作業は自分の老いを痛感させる作業だと

いつも思ってしまう。

俗に言う「老いるショック」だ。

若かりし頃は当然そんなことはなく、デートの時など緊張すればするほど

手がネチョネチョになり夏のお祭りの時などは非常に困ったものだ。

そういえば美容院の鏡に子供の手の跡が残っていることがよくある。

不思議とあれはガラスクリーナーでもなかな落ちなくて一体彼らの手の平からは

何が分泌されているのだろう。

過ぎ去った月日を振り返りながらあの日のネチョネチョは今となっては懐かしい思い出。

そう、歳を重ねてゆき乾いてゆくのは心だけでなく手の平さえもだったのだ。

いや、もう全部だ。

 

どうかおじさんがやおばさんがレジ周りで袋をめくれなくて困っている姿を見かけたら

優しい子供がそっと手を差し伸べてくれる世の中になることを切に願う今日この頃である。